弱男というのは殺伐とした世界で独りぼっちで生きる生き物

作品

みなさん、おはようございます。
ヌエゴリラと申します。

今回は、ONE OUTSについて紹介したいと思います。
本作はビジネスジャンプで連載され、全20巻、プロ野球のペナントレースを描いた作品ですが、野球漫画というよりは、野球を題材にした駆け引きを楽しむ作品となっております。

魅力な点

駆け引きや心理戦

本作、なんといってもこれが最大の魅力でしょう。

主人公である投手渡久地東亜とくちとうあは、160キロを超える豪速球を投げられるわけでもなければ、バッターを空振りさせるようなキレのある変化球を投げられるわけでもありませんが、あらゆる回転のストレートを投げる正確無比なコントロール駆け引きや心理戦に長けていることを生かし、相手打者をうまく打ち取っていくスタイルで作中の沖縄の賭け野球では500戦やって499勝したほどの実力者です。

500戦目に、本作のキーマンともいえる児島弘道こじまひろみちと勝負して敗北(実力で負けたわけではないが、児島の執念を読み切れなかったのは事実)、勝者である児島の要求である「右腕をもらう」を遂行するために、プロ野球チーム埼玉彩京リカオンズへ入団することとなります。

渡久地はプロ野球界でも基本的に終盤以外は無双し、チームメイトをいろんな策を講じて強くしていきます。

ここまで読んで、そんな程度で無双って現実味なさすぎじゃない?と思った方もいるかもしれません。筆者も野球面に関しては、決してリアリティーがある方とは言えないと思います。

ただ、これは本ブログで何回も言っていることですが、「リアリティーがある=面白いではなく、むしろはっちゃけているほうが面白いまである」(この辺のバランスは難しいですが)ですし、繰り返しになりますが、本作は野球漫画というよりは駆け引きを楽しむ作品であるため、野球面でのリアリティーはそこまで重視する必要がないと考えています。

じゃあどんな駆け引きがあるの?と言えば、もう盛沢山です。
そもそも、作品のタイトルになっているワンナウツですが、これは作中の賭け野球の通称でもあり、渡久地がリカオンズのオーナーである彩川さいかわに仕掛けるゲームでもあります。

渡久地が彩川に仕掛けたワンナウツ契約は、細かいルールを除いた大原則として、渡久地がワンナウト取れば500万貰う代わりに、1失点ごとにオーナーに5000万払うというものです。

このマネーゲームを引っさげたこと自体に意味があることが中盤でわかるのですが、それはいったん置いといて、このワンナウツ契約を軸に展開される物語は圧巻です。

序盤から、渡久地にお金を払いたくないオーナーが、自チームの選手を買収してエラーしろなどと命令します。それを見抜いた渡久地は、その選手に守備をするなと命令して、8人で戦うことになります。ちなみにリカオンズの監督(とコーチやチームメイト)は、ワンナウツ契約なんて知る由もないし、監督に至ってはオーナーのイヌであるため、わざとエラーする守備を交代することはありません(そもそもオーナーによる買収があったことも知らない。オーナーが交代するなと言えば理由も聞かずに従うだけ)。

そんなドアウェーの状況の中、渡久地は敵も味方も煽り散らかして(11点ビハインドなのに、「お前ら程度8人で十分だ」)、敵には冷静さを失わせ、味方にはやる気を出させます。

そこから、癖のない相手投手に癖を作らせるなどしてその試合は逆転勝利するのですが、こんなのはまだ序の口。

次のエピソードである王者マリナーズとの3連戦、オーナーの無茶ぶりにより渡久地は三連投することになります。

初戦では渡久地のストレートがただのストレートではなく通常のストレートと低回転のストレートがあると見切った高見たかみは、チームメイトのバットが重いことを逆手に取り渡久地の裏の裏をかく戦法を取りますが、高回転のストレートを前に打ち取られ、試合はリカオンズの勝利。

2戦目は、渡久地に打って勝つことより渡久地潰しを優先したマリナーズとのロースコアな試合が続き、最終回で代打児島、渡久地の心理的安全マージンの心理を利用した策略もあってサヨナラホームランで決着。本作は、たびたび具体例などを用いた心理的豆知識が披露されますが、普通に結構タメになります。

3連戦、当然ですが渡久地は体力的にボロボロで、試合序盤から打たれまくります。その時点までプロに入ってから失点ゼロだったのがウソのように失点を重ね、4回裏で14対0という状況になります。
しかし、それすらも渡久地の策略。夜に大雨警報が出ていることを知った渡久地は、ノーゲーム狙いで引き延ばしていたことが明らかに。その企みがばれてからはわざと四球を出すなどしますが、マリナーズ側も試合を成立させるために渡久地が投げてからバッターボックスを移動するなどしてわざとアウトを取られることによって、試合を進めようとします。
ここから、アウトを取られずに試合を長引かせたい渡久地と、アウトをさっさと取られて試合を進めたいマリナーズという、本来ならあり得ない逆転現象が起こり反則合戦が始まります。

背景はともかくとして、現実でも状況だけなら11点ビハインドから勝利することも、代打サヨナラホームランもあり得るとは思いますが、反則合戦はまず見られないでしょう。

とまあ、このマリナーズ3連戦後も、現実の野球ではあまり見ないプレーを多く見ることができ、それがまたことごとく面白い。これ以上書くと、(すでに長いですが)とんでもなく長くなってしまうのでこの辺にしておきます。

ただ、あと一つだけ紹介したいのが「Lチケット」制度。

このLチケットというのは、従来のチケットの価格の1.5倍で選手に投票ができるチケット。ただし、ただの値上げではなく、リカオンズが負けた場合はチケット代を全額返金するというもの。

前提として、渡久地が入る前のリカオンズは万年Bクラスで最下位争いをするほどの弱小チームで、作中の世間の認識では「2回に1回勝てばいいほう」という程度の実力。これに当てはめるなら、1.5倍は実質値下げと考える人や、シンプルに負けたらタダなるかもしれねーしくらいの軽い気持ちのミーハーなどを獲得して、値上げしたにもかかわらずチケットが爆売れするという展開があります。このLチケットの肝は投票制度にあり、リカオンズを強くするために導入されたものなのですが、それはみなさんの目で確かめていただくとして……。

Lチケットの制度、実際導入したらどうなると思いますか?負けたら全額返金という点から、現実的かつ経営的にそう簡単に導入できるものではないと思いますが、AIの見解は以下のようでした。

筆者は同感です。ファンなら勝ち試合を見られるのは嬉しいはずだし、負ければ返金なのであればローリスクハイリターンな気がします。圧倒的に強くて勝ち試合のほうが多いチームならただの値上げになりかねませんが……。長期的な運用はどうなんですかね?グッズやサービスを提供するお金をどうやって捻出するのか、割引クーポンも金額によってはどうなんだろうとは思います。

とまあこのように、一風変わった展開が数多く見られるのが本作の魅力です。

意外と熱いシーンもある

本作、駆け引きなどを見て「おー、すげー。おもしれえええ」と思うことはたびたびありますし、作中の人物でも感情豊かな人はいるのですが、「このシーンあちぃー」と思うようなシーンはあまりありません。

熱いシーンって基本的に、根性を発揮するとか力の勝負とかが多いと思いますが、本作は駆け引きメインなのでそういう場面は極端に少ないです。だから、熱いなと思うシーンが少ないのは仕方のないことだと思います。

でも、そんな本作だからこそ、数少ない熱いシーンが際立ってもいて、しかもその熱いシーンが熱血作品に引けを取らない。

倉井一くらいはじめという、弱小球団リカオンズの中であっても底辺と思われていた投手が、南田みなみだという恩師に激励され覚醒するシーンは、何度見ても泣いてしまいます。南田の激励の内容も感涙ものですが、それを受けてトラウマで委縮していた倉井が爆発するのも熱いんですよ。

他にもリカオンズ捕手で主将でもある出口智志いでぐちさとしの演説、終盤において、いつも弱気で頼りなかったリカオンズの面々の前向きな発言が多くなるなど、胸を打つシーンが意外とあってちゃんとしているのも魅力の一つです。

微妙な点

筆者はそこまで気にならないですが、画力自体はそこまで高くもないし、若干好みが分かれる絵とは思いますので、微妙な点に挙げさせていただきました。

終盤がやや駆け足気味

終盤、王者マリナーズとの頂上5連戦があるのですが、わりとダイジェスト気味です。ここに至るまでの展開はしっかり積み上げているし、まあ5連戦しっかり描く必要も内容もないのは理解できるのですが……ご都合感も否めず、作者が疲れてしまったように見えてしまうのは微妙な点ではあります。

まとめ

以上が、ONE OUTSについての紹介でしたが、いかがだったでしょうか。

2008年にアニメ化もされていて、10巻の頭くらいまで消化しています。ややカットはあるものの原作再現度も高いです。
2期をやる気配は残念ながら今のところはありませんが……。

本作は、ライアーゲームと同じ作者が描いた作品です。
野球作品としてではなく、駆け引きや騙しあいの作品として見ていただければ、きっと面白いと思ってもらえると思っています。

それではまた、次回の投稿でお会いしましょう。

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