みなさん、おはようございます。
ヌエゴリラと申します。
今回は、筆者が一番好きなフィクションである「とある魔術の禁書目録」について紹介したいと思います。
概要
ライトノベルやアニメに少しでも造詣がある方ならば、本作品の名前くらいは知っていると思います。
開始から20年を迎えた2024年現在でも刊行が続いております。
天下の「週刊少年ジャンプ」の長期連載も、こち亀などの例外を除けば十数年ということを鑑みれば、その凄まじさがわかると思います。
信者補正は入ってしまいますが、バトルが好きでハッピーエンドが好きな方には間違いなくおすすめの作品です。
魅力な点
徹底的なまでのハッピーエンド
これが、この作品の最大の魅力です。
筆者は「一流のバッドエンドより三流のハッピーエンド」というほどにハッピーエンド主義者なのでめちゃくちゃ刺さります。
正直、強引ともいえる展開もままありますが、理路整然としたバッドエンドより、ご都合主義でもハッピーエンドが好きな筆者にとっては、ほとんど気にならないどころか「俺が描くハッピーエンドを黙ってみてろ!」という姿勢には潔さと気持ちよさすら感じます。
お話として、いい方向、前を向けるような終わり方をするのはもちろん、モブを除けばキャラ退場も極端に少なく、ハッピーエンドの質も高いです。
最初に記載した通り、この作品は現時点ですでに20年続いており、冊数も本編だけで50は超え、キャラ総数も三桁は超えていますが、その20年間で死んだキャラはモブや過去の死者を除けば、敵を含めてもおそらく両手で収まるレベルです。
筆者は敵キャラも含めキャラ退場(死別でなければまだいい)があまり好きではないので、この点もいいです。
長編の場合はその過程で一時的にビター気味だったり、ビターと解釈できなくもない終わり方をするエピソードもありますが、最終的かつ一般的な解釈ならば、現時点ではハッピーエンドしかない作品です。
ハッピーエンド主義者の方は、この1点だけでもこの作品を手に取るに値します。
キャラ
繰り返しになり恐縮ですが、本作品は20年もやっているだけあってキャラも相当数おり、だけどほとんどが魅力的なキャラです。
中でも魅力的なのは、主人公の上条当麻とヒロインの御坂美琴です。
上条当麻は、言ってしまえばオールドタイプの熱血型主人公で、右手に宿る「幻想殺し」という、相手の能力を打ち消す能力(厳密には違うが、ここでは省きます)を駆使して戦います。
落雷程度のエネルギーなら、幻想殺しは難なく無効化できるほど破格な性能ですが、右手限定であるのと彼の身体能力は特別高くないため、彼のバトル自体はそこまで派手ではありません。
じゃあ何が魅力なのという話ですが、「意地でもみんなで笑えるハッピーエンドを目指す姿勢とその過程」です。
時に、上条当麻は非合理的かついばらの道を進むこともありますが、そのために彼は彼の持ちうる全知全能を駆使し、仲間にも頼り、ハッピーエンドの道を諦めません。
そしてそのためなら、彼は「言葉」を惜しみません。味方だろうが敵だろうが、人を動かす、止めるためなら何百字でも言葉を紡ぎます。
だからこそ、響くんです。理路整然ではない、感情と本音むき出しの言葉の数々は、作中のキャラも読者の心も揺さぶってきます。
そんな彼の行動は独善とも取れますが、彼はそれが独善だと自覚し、それでも構わないという姿勢を貫くところが好きです。
助けてほしいなんて言ってない人にも、上条は「バッドエンドが嫌な自分のために」無理やり助けようとします。それに対してごちゃごちゃ言い訳はしません。
まあ大体のフィクションの主人公は本質的にはこうだと思いますが、大体のフィクションは助ける対象が素直に助けたがられるため、なかなかこういう場面すらありません。助けたい対象が助かりたい気が本当にほぼなくて、助ける理由が助ける側依存な場面がある作品は、筆者が知る限りでは本作とテラフォーマーズくらいです。
ただ、テラフォーマーズの場合は助けたい対象に罪どころか落ち度すらほぼない被害者のため、読者視点は助けるに値すると思いますが、本作に至ってはそれに該当しない悪人に近い人でも助けます。
綺麗ごとを言っているフィクションは大量にありますが、その綺麗ごとや「人を助けるのは、結局最後は理論より感情」を最も貫いているのが本作だと思います。
続いて、御坂美琴。
彼女は、電撃文庫(本作が発刊されているレーベル)内のラノベのヒロインの人気投票において、10回ほど堂々の1位を獲得しています。
電撃文庫は、「ラノベ界の週刊少年ジャンプ」と言っても過言ではないレーベルで、灼眼のシャナやソードアートオンライン、魔法科高校の劣等生など数々の有名作を輩出しており、レーベル単位で魅力的なヒロインが少ないというわけではありません。
だからこそ筆者はこの結果を知ったとき、「確かに御坂好きだけど、過大評価では?」という気持ちがあったので、当時一度分析してみました。
筆者も含めて、なぜ御坂美琴はこんなに好かれているのか。
考えたうえでの筆者の結論をあえて一言でまとめるならば、「王道的なことを貫いた」です。
御坂美琴とは、主人公である上条当麻に対しての振る舞いは、いわゆる「ツンデレ」に近く、性格は「困っている人がいたら見捨てられない」ので熱め、能力は「電撃使い」とスタンダードだがレベルは高く、時に頼りにもなれば、そんな御坂でも敵わないほどの強敵を前にして、上条当麻に守られることもある……と、それぞれヒロインや人として魅力な点はありますが、目新しさは特にありません。
ただ、上記の要素は大体の人には受け入れられ、悪く言えば見飽きているほどの「王道」や「ベタ」ともいえる要素だと思います。そして「王道」や「ベタ」と言われる要素は、そう言われるほどになるまでに受け入れられた証でもあります。
回りくどくわかりづらいかもしれないので、料理でたとえます。
美味しい料理を作るために、美味しい食材を奇をてらった方法ではなく、大多数がおいしいと思う方法で調理した。
実にシンプルな理屈ですが、御坂美琴とはそんなキャラなのだと思います。
そして、そんな彼女は作中でほとんど芯がブレない。だから一度好きになってしまえば嫌いになることはないし、安心して見ていられる。
まあ、芯がブレないのは作中のキャラほとんどなんですけどね。
王道的なヒロインが好きなら、きっと好きになれる魅力的なキャラです。
テーマとメッセージ性
本作のテーマは、「複雑な問題を抱えた魔術師なり能力者なりを、主人公が真正面から叩いていく話」です。このテーマ自体、字面だけだとピンと来ないかもしれませんが、本作を鑑賞すれば腑に落ちるし、それが貫かれているのがわかるかと思います。このテーマは20年間ブレていないため、このテーマに魅力を感じれば本作をかなり楽しめます。
また、本作は、メッセージ性も結構あると筆者は思います。
例を挙げると、
・人間とは何をもって人間なのか。また、人間じゃないとしてそれに何か問題があるのか
・正誤や善悪好悪より、自分が何をしたいかが重要ではないか
・強さとは何か
・人間とはいろんな側面があるものではないか
・死とは何をもって死なのか。記憶の有無は重要なのか
・幸せとは何か
・自分とは何か
・世の中を善とか悪とかでカテゴライズできるものなのか。本当の悪人なんているのか
などなど、いろいろあります。
作中では、キャラたちがそれらの答えを出していますが、それが絶対的な正解ではないですし、いろいろ考えさせてくれる作品でもあります。
ちなみに筆者は、作中のキャラの考えに大方賛成です。
問題点
あまりに唐突だったり、無理やりな展開
強引なハッピーエンドは全然いいんですが、そこに至るまでの導入や過程が強引すぎるのは「うーん」と思う時があります。
具体例として、新約9巻のラストにおいて、上条と彼の守りたい人物のたった二人きりで世界中を敵に回す、という展開があります。これは、上条の守りたい人物の評価が、その時点では「大悪人」のためですが、今でもほぼ納得できておりません。
この展開の狙いは、「たった二人で世界中を敵に回す」というシチュエーションが熱いのと、ここからどう巻き返していくかに見所がある、というところでしょう。
これの何が納得できないかというと、その現場に上条の味方が何人かいたのに、その人たちの協力を仰がなかったことです。
一応、「非現実的な内容だから伝えても伝わらない」という理由は設けられていますが、この時点で本作は累計だと33冊目であり、上条と彼の味方の人物との相互理解は十二分に深まっているため、細かい内容を伝えなくても上条の言い分はいったん聞くはずです。
また、上条のキャラとしても、最終的には殴り合いで解決することになっても、それまでの言葉を惜しまない(それこそ相手が納得してくれる保証なんかない場面でもさんざんやってきた)ので、それとも矛盾してしまっています。
演出面の話で言っても、別に「二人きり」である必要性がありません。「二人きり」のほうがより強烈ではありますが、「上条+味方数名vs世界中」でも十分熱い展開です。なんなら上条以外の戦闘も見られるメリットすらあったはずです。
にもかかわらず、「二人きり」という要素を優先するあまりキャラ崩壊などを起こしてしまうのはいかがなものかと思いました。
ちなみに新約10巻において上条の味方は、「何の理由もなしに唐突に大悪人の味方になるわけない。なにかあるんだろう」としっかり察しており、上条と軽い激突はありますが割と早めに納得、結局上条の味方として世界中と戦うシーンがあります。
……そんなんだったらはじめから「二人きり」でなくてよかったやろがい!と思ったものです。
新約10巻では、世界中を敵に回したため上条は連戦を強いられ、その戦闘の中には原形をとどめないほどボコボコにされるシーンもあるのですが、回復イベントを挟んだわけでもないのに、その次の戦闘では普通に戦っているシーンもあります。
本作では結構なダメージを負ったのに、次のシーンでは敵と戦えている、という場面は上条に限らずちょくちょくあります。
このダメージ問題については、ハッピーエンドが見たい筆者は受け入れましたが、理論派の人は結構違和感あると思います。
三主人公制
この作品、序盤は上条のみが主人公なのですが、のちに一方通行、浜面仕上という人物も主人公になります。
出番の比率はさすがに上条のほうが多いですが、上条好きからしたら一方通行や浜面仕上パートはシンプルにノイズでしかない。
また、一方通行や浜面仕上はもともと悪人寄りであり、そいつらが主人公を張っていること自体に批判する人もいます(この点については筆者は気にならない)。
それでもまだ、一方通行パートはいいんです。彼はあらゆる点で上条当麻と対極的な存在だから。
たとえば、ボロボロになりながらなんとか勝ちをもぎ取る上条に対して、一方通行はチート能力を有し基本的に無双するなど、上条との差別化はできているのでなんだかんだ面白さを見出せます。
ただ、浜面仕上はそうではなく、役割として上条の下位互換でしかない。挙句の果てに上条パートと絡みがあるわけでもないので、本編にはガチのマジで必要ないのが、つまらなさに拍車をかけていました。
――そう、旧約の22巻までは。
新約からは彼らのごり押しが減り、しかもメインである上条パートと合流、直接的または間接的に上条の手助けとなることも増えたため、読んでいて苦痛ということが減っていきました。
とはいえ、やはり苦痛だった期間がそれなりにあったこと、上条の手助けとなる存在として、一方通行や浜面でなければならない理由はないこと、一方通行や浜面が主人公化したことによって、本作が結構批判されていることを加味すると、デメリットのほうが多いので問題点として挙げました。
悪人に対する処罰が甘い
これは、筆者はさほど問題視していませんが、世間でよくある批判です。
見出し以上の解説は特にしようがなく、ぶっちゃけ筆者も「処罰が甘い」とは思います。
でも、それが悪いことだとは思いません。
というのも、少年漫画などでは割と顕著ですが、たとえ悪人相手でも殺さないとかのちに味方になるとかありがちじゃないですか。筆者はキャラ退場を極端に嫌いハッピーエンドを好むので、「処罰が甘い」のは全然気になりません。
そもそも、魅力的な点のメッセージ性でも記載した通り、本当の悪人なんているのかという投げかけもあるので、そこも加味して気になりません。
なので、少年漫画好きや「処罰については最低限あればいい」と考えている方には気にならない点だと思いますが、罪と罰はちゃんと比例してなければならないと考えている方は注意してください。
番外編 ファンのことをあまり考えていない
もはや作品本編での話ですらありませんが、どういうところがファン(特に古参)のことをあまり考えていないのかというと、
・スピンオフの多さ
・アニメのDVDの特典小説をのちに販売する
この2点です。
「なんで?別にファンならどっちも嬉しいんじゃないの?」という方もいるかもしれません。
確かに、比較的最近ハマった人や、スピンオフならなんでもいいと思う人ならそうかもしれません。
でも実は、それぞれに弊害があり、長い目で見ると作品存続にかかわるほどのデメリットを抱えています。
まずはスピンオフについて。
スピンオフが多いこと自体はまあいいんです。問題は、そのスピンオフを見ないと本編で分かりづらい場面があること、そもそもスピンオフ自体がさして面白くないこと、スピンオフのせいで本編の刊行ペースが遅くなっているかもしれないことです。
本編の刊行ペースについては憶測ではありますが、仮にスピンオフのせいで本編の刊行ペースが遅れると、その分読者が離れていく可能性が増え、最終的に作品を継続することが難しい売り上げになってしまっては元も子もないです。
スピンオフがさして面白くないについては、例としてスピンオフの一つ「とある科学の超電磁砲」では、原作の再放送みたいな部分もあるし、原作のインフレ具合を見てると内容がおままごとレベルなのもつまらない。もうすでに再放送やってるんだから、とっとと原作と合流してそれを描けばいいのに、なぜか過去編をやってお茶を濁す始末。何をしたいの?としか言いようがありません。
スピンオフを見ていないと「なんだこれ?」となる場面が本編で挟まれるのも問題で、読者離れを加速させる一因となり、最終的に作品を継続することが以下略なのでやめてほしいです。
アニメのDVD(以下円盤)の特典小説をのちに販売する、についても同じで、そういうことをすると円盤を買う意味が著しく減少し、円盤の売り上げも減るうえに、特典目当てで円盤を買った層からも反感を買い、読者離れが加速し以下略。
もっとも、10年前ならともかく、今は円盤売り上げなんてさして意味はないのかもしれませんが……。
これについてはかまちー(原作者・鎌池和馬の愛称)がどうのという問題ではないし、本編そのものの面白さに変わりはないので、筆者は本編だけは買い続けますが、それ以外には一切のお金を落とさないことに決めております。
筆者はおそらくまだいいほうで、並の読者なら本編ですら脱落していると思います。そもそも、単純に長いですしね。
実際、本作はピーク以降年々売り上げは右肩下がりです。かといって20年もやっている上に小説なのに50冊以上もある作品の新規獲得はなかなか難しいです。だからこそ古参ファンを大事にしなければいけないのに……と思っております。
とはいえ、繰り返しになりますが作品本編の面白さという観点からはなんの関係もない問題点のため、番外編とさせていただきました。
まとめ
以上、とある魔術の禁書目録の紹介でしたが、いかがだったでしょうか。
50冊以上出ている本作ですが、もともと本作は漫画の読み切り連載のように、1巻だけで完結する作品でした(でもその1巻が思った以上に売れたので続きが執筆され現在に至る)。そのため、1巻でしっかりといい感じに物語はまとまっていますし、筆者も最初の1巻が原点にして頂点と感じているので、まずは1巻だけでも手に取っていただければと思います。
それではまた、次回の投稿でお会いましょう。
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