この世のすべては、弱者男性を追い詰めるためにある

作品

みなさん、おはようございます。
ヌエゴリラです。

今回は、BLEACHについて紹介したいと思います。
本作は、週刊少年ジャンプにおいて十数年連載されました。全部で74巻あります。

・魅力な点

①圧倒的な画力

絵がキレイで、キャラデザインも秀逸。男キャラも女性キャラも様々なタイプがいて、しっかり描き分けもできていてすごいです。
ただ、これには弊害もあって、本作は流血も多いし、それ以上の描写もそれなりにあります。ゆえに、『そういうシーン』を見るのは結構『クる』ものがあります。

②セリフ回しやネーミングセンス、ポエム

本作の作者、久保帯人くぼたいと先生(以下、愛称である師匠)は、セリフ回しやネーミングセンスが秀逸です。本作の最大の魅力と言ってもいいかもしれません。

まずはセリフについて。
至るところでこじゃれたやり取りがあるのですが、中でも痺れるのは藍染あいぜんのセリフでしょう。もはや彼クラスのセリフはインターネットでも普通に有名です。『憧れは理解からもっとも遠い感情だよ』とか、もっともかどうかはともかくとして、確かに憧れてるだけって理解しようとしてないよな……と納得せざるを得ません。

こじゃれたやり取りだけでなく、普通に名言とか熱いセリフもあります。

続いて、ネーミングセンスについて。
キャラの名前が秀逸。グリムジョー・ジャガージャックや、バンビエッタ・バスターバインなど、声に出して読みたいレベルの名前がそれなりにあります。

また、本作は大別すると、死神、ホロウ滅却師クインシー完現術者フルブリンガーという能力者たちの物語になりますが、死神は斬魄刀ざんぱくとう(もうこれがかっこいい)という刀を用いて戦います。
その刀には二段階の強さがあり、始界しかい卍解ばんかい(この卍解という表現もかっこいい、素人なら始解の対として終解あたりしか思いつかん……!)を駆使して戦います。
で、この斬魄刀の名前自体もかっこいいし、卍解ばんかいするとさらにその刀の名前が変化するのですが、これもまたかっこいい。
天鎖斬月てんさざんげつ千本桜景厳せんぼんざくらかげよし黒縄天元明王こくじょうてんげんみょうおう雀蜂雷公鞭じゃくほうらいこうべん……何か専門的な勉強をしたのか、そうでないならただの天才としか思えません。

最後に、単行本の頭にある、いわゆる巻頭歌についてです。

本作の単行本のブックカバーの最初には、なぜかポエムが載っています。
理由は謎ですが、ポエムの内容自体は大体秀逸。

『剣を握らなければ、お前を守れない。権を握ったままでは、お前を抱きしめられない』

この辺は、確かにそうやなあというくらいですが、

『僕はついていけるだろうか。君のいない世界のスピードに』

この辺レベルになると、正直意味がよくわかりません(笑)。でも、なんかしゃれているというか、『かっけえ……』と思ってしまう。筆者はなるべく自身の言動や行動、感情の動きにたいして言語化することを心がけていますが、そんな筆者でも言語化ができない。
『考えるな、感じろ』レベルのポエムですが、それがいいとすら思います。

③ストーリー

本作、ストーリーについては連載当時よく批判されておりました。
理由は明白で、破面アランカル編以降の進行スピードが『遅いわりに薄い』、いや『薄いから遅い』のか、連載当時は、筆者もこの点に関しては正直共感せざるを得ない部分はありました。
だけどこれ、本作に限らず漫画あるあるなのですが、単行本で読むとそんなに感じません。

そもそも、ちゃんと考えたら破面編以降はストーリーが長くなってもしょうがないんです。

破面編の1個前の話が、いわゆる尸魂界ソウルソサエティ編で、この長編の敵は隊長13人+副隊長13人+有象無象いますが、まともに描かれた戦いは12戦くらいです。

それに比べて破面編は、大ボス一人、側近2人、幹部10人、幹部もどきが複数、幹部10人の部下複数+有象無象と敵が多く、その大体の戦闘をそれなりに描いています。
要は、単純にバトルの数が違うんです。まあバトルの内容も冗長はしていましたが、単純に数が多くなっている以上、それを差し引いても長くなるのは当然だったんです。
ということで、長いというのは感じ方の問題であり、本作を全体通してみると、ラストがやや駆け足になった以外はそれなりに綺麗にまとまっています。

で、まあストーリーがそれなりにまとまっているだけの作品程度ならそれなりにあるものですが、本作が秀逸だと思うのは、設定と伏線の回収です。
設定や伏線について、重大なものは本作の面白さをまあまあ損ねてしまう恐れがあるため、比較的軽い伏線を紹介します。

主人公の黒崎一護くろさきいちごは、死神代行の活動をする際に『コン』という生命体というか概念に、もう一人の黒崎一護として影武者になってもらうことがあります。
そして、黒崎一護の父である黒崎一心いっしんは、息子である一護のことを名前で呼びますが、その影武者と会ったときは、『一護と呼称したことがない』という伏線があります。
まあこれだけだと、『ふーん』くらいだと思います。あらかじめ言った通り、これは伏線としては軽いものであり、伏線自体がすごいものではありません。

ただ、正しい意味での伏線だなあと、筆者は感動しました。

というのも、今日日巷でいう『伏線とその回収』は、大体『前フリとその回収』であって、『伏線とその回収』ではないからです。

たとえば、ワンピースの正体だとか、『あの方』の正体だとかを『未回線の伏線』などと表現されることがありますが、それはデカデカと提示された謎であって伏せられているわけじゃないじゃんと。
いやまあ、大多数の方はそれをわかったうえで便宜上『伏線』と表現しているだけかもしれません。本当の意味での『伏線とその回収』をやっているシーンがあまりありませんし、『前フリとその回収』より『伏線の回収』のほうが伝わりやすいでしょうし。野暮なツッコミと言えば野暮なのはわかっています。

でも、本作のように正しい『伏線とその回収』を実践している作品が存在している以上、どうしてもそういう突っ込みをせざるを得ない。そうしないと本作のこれは表現のしようがなくなるから。

熱弁してしまいましたが、設定や伏線回収も込みで、本作のストーリーはなかなか良いと思っています。

・問題点

①テンポがやや悪い

魅力な点で述べた通り、設定や伏線回収なども込みで、ストーリー全体としてはいいのですが、部分部分を切り取ると、『うーん』という箇所はいくつかあります。
このバトルこんな長くなくていいな、とか、逆にこのバトルは見たかったのにな、とか。バトルの内容も波があり、破面編からは大ゴマが多かったり、そもそもこの展開いる?とか、いろいろ。
全バトルが面白い、無駄な展開がないフィクションなどありませんが、本作はそれがやや多くテンポが悪かったのかなと。

②計画性がなさそう

こう思う理由はいくつかあるのですが、まず、本作の名前がちゃんとあるような強いキャラは味方も敵も大体2段階以上の強さのレベルを有しています(このシステムがバトル長くなる理由でもあった……)。

死神で強い奴はノーマル状態と始解と卍解。
虚で強い奴はノーマル状態と刀剣開放レスレクシオン
滅却師で強い奴はノーマル状態と滅却師完聖体クインシーフォルシュテンディッヒ
完現術者も特別な呼称はありませんが、パワーアップイベントはありました。

上記に関して、実は本編のみでは卍解、刀剣開放、滅却師完聖体未登場などがありました。2022年から分割クールで放映されているアニメ『BLEACH千年血戦編』や、外伝小説で一部補完等がありましたが、それでも見せ場づくりとして十全とは言えません。

また、本作のラスボスとの最終決戦もほかの戦いと比べて短く、『あーこれいついつまでに連載を終了します』って宣言との帳尻合わせのために急いだんだろうなあと察せてしまいます。

それでも、ここまではまあしゃあないとは思います。

筆者は小説をたまに書くので思うのですが、1週間で1万字すらも難しい。
その最たる理由は、『自然で面白い展開がなかなか思いつかないから』なのですが、週刊連載の漫画家たちはストーリーを考えてそれを絵にしているなんて、ぶっちゃけ化け物中の化け物です。一切の矛盾や不自然さなどなく連載するなど不可能で、連載を続けているだけでも十分すごいことです。

だから、まあ上記程度はしゃあないと思えるわけですが、破面編での『どう見てもこの戦い忘れられたよね』という点だけでは擁護のしようがありません。ダイジェストとか、演出のために戦いが終わって『もうすでに勝っていたorやられていた』とかじゃなくて、誰の目から見ても『忘れられた戦い』があります。計画性とかそういう問題ですらないとは思いますが、これはさすがに問題点と言わざるを得ません。

③贔屓キャラと似たような展開

本作、最初は死神たちが敵なのですが、のちに味方になります。そこから、死神たちのキャラの出番や活躍の偏りがまあまああります。
設定上、たとえば回復が得意なヒーラー的立ち位置の死神が戦闘シーンなど少ないのはわかるのですが、そういうのを差し引いても偏ってます。それで勝つならまだいいのですが、割と負けたり詰めが甘くて作中や読者からディスられたりもするキャラもいます。

そのキャラのファンからしたらたまったもんじゃないですよね。

また、同じキャラが出張る以上、バトルにおいて勝つにしても負けるにしても似たような展開になります。せっかくいろんなキャラがいるんだからいろんなバトルを見たいのに、なかなかそうはならない。そりゃ全員の設定をしっかり考えて描写するのは大変なのはわかるのですが、だったらはじめの設定のうちからもう少しキャラ減らせよ、というのは思ってしまいます。

総括

以上がBLEACHのレビューでしたが、いかがだったでしょうか。

キャラが多いために見せ場を作り切れなかったり、ストーリーが冗長したりなどはありますが、それを補って余りある画力とセンスと伏線回収には目を見張るものがあります。

余談ですが、虚とか滅却師とか尸魂界は変換で出るのに、藍染は『愛染』とかしか出てこないのバグすぎる。

それではまた、次回の投稿でお会いしましょう。

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